アプリ開発にかかる費用の内訳とは?費用を抑えるポイントも紹介

2022年12月19日

アプリ開発にかかった費用や、その内訳が詳細に紹介されていることは多くありません。そのため、いくらアプリを作りたくても、検討段階ではアプリ開発にかかる費用の全体像が掴みづらいのではないでしょうか。「費用を抑えてアプリを開発したい!」と思っていても、具体的な費用のイメージが掴めなければ、見積もりをもらっても適正価格かどうかの判断はできません。

そこで、この記事ではアプリ開発にかかる費用の内訳から、開発費用を抑えるポイントまで詳しくご紹介します。

アプリ開発にかかる費用の内訳とは?

まずは、アプリ開発からリリースにかけて必要な費用の内訳をご紹介します。

エンジニアの人件費

アプリ開発にかかる費用の中でも、エンジニアの人件費が最も多くの割合を占めます。開発するアプリの種類や機能によって異なりますが、開発費用の約8割がエンジニアの人件費と言われています。

アプリ開発を行う場合、開発規模にもよりますが開発プロジェクトを立ち上げて複数のエンジニアが携わることが一般的です。また、プロジェクトに関わるエンジニアは役割ごとに分かれています。

例えば、プロジェクトの役割ごとにプロジェクト責任者PO(プロジェクトオーナー)、プロジェクト全体を統括するPM(プロジェクトマネージャー)やPL(プロジェクトリーダー)、そして設計などを担当するシステムエンジニアやプログラマーに分けられます。そして、エンジニアの人件費は技術レベルで変動します。

では、具体的な算出方法について確認していきましょう。

人件費の算出方法

「人月」は、エンジニア1人当たりがこなす1ヶ月分の作業単価を表したものです。アプリ開発を開発会社に外注する場合、外注先企業のエンジニアが有する技術力が高いほど、1人月当たりの単価(人月単価)は増加します。

アプリ開発エンジニアの人月にはおおよその費用相場があります。初級エンジニアは60〜100万円/月、中級エンジニアは80〜120万円/月、PMや管理職クラスになると120〜160万円が相場とされています。

人月単価を使ったエンジニアの人件費は主に以下の式などで算出されます。

「人月×人数×開発期間」

人月を用いればアプリ開発費用の大部分を占めるエンジニアの人件費が計算できるため、アプリ開発費用のおおまかな見積もりを出すことが可能です。

デザイン費用

アプリ開発では、システム開発と同等にデザインが重要です。アプリのデザインでは、ブランドイメージはもちろん、UI/UXを意識する必要があり、専門性の高い技術力が求められます。そのため、アプリ開発ではデザインにかかる費用を考慮しなければなりません。なお、デザイン費用はエンジニアにかかる費用と同じく、デザイナーの技術力と開発期間で変動します。

システム開発からデザインまでを全て一つの外注先に依頼する場合、エンジニアの人月とは別にデザイナーの人月も計算する必要があります。アプリの規模や種類によりますが、デザインにかかる費用はおよそ100万円前後と言われています。プロジェクト単位で制作会社に依頼する場合は、15万円~20万円ほどで発注可能なケースが多いとされています。

ドメインやサーバーの管理費用

アプリ開発においてリリースはあくまで通過点でしかなく、ユーザーが正常にアプリを利用できる運用体制を維持することが重要です。そのため、リリース後の運用過程で発生する費用、主にドメインやサーバーの管理費用も念頭に入れておく必要があります。

例えば、アプリリリースと同時、あるいはそれ以前から公式サイトなどを立ちあげるケースが一般的ですが、サイトの作成にあたって独自ドメインを取得・運用するためには多少の費用が必要になります。相場価格は1,000~2,000円/月程度で、希望するドメインによっては取得にかかる費用が高額になる場合があります。

また、アプリを稼働させるためのサーバー費用が毎月発生します。サーバーは月額利用料が安いものを選ぶことで、費用を抑えられます。例えばAWSを最小構成で利用した場合、サーバー費用は月に数万円程度となります。

ただし、管理費用が安いサーバーはデータ転送量の上限が低く、アプリへのアクセスが集中した際に正しく動作しなくなるといったリスクも抱えています。正常に動作しないアプリはユーザーの離脱を生む大きな原因とされているため、アプリの規模に応じた適正なサーバーを利用することが求められるでしょう。

SSL証明書費用

SSL証明書はアプリとサーバーがデータのやり取りを行う際に、データを保護するために必要な電子証明です。SSL証明証は通信相手が偽装していないことを証明し、公開鍵や共通鍵を用いてクレジットカード情報などの機密情報データを暗号化してくれます。

SSL証明書は認証レベルで費用が異なり、無料で利用できる個人向けのものから、数万円~十数万円の費用が必要な法人向けのものなどがあります。SSL証明書はどの認証レベルのものを採用するかで必要な費用が大きく異なりますが、ユーザーにアプリを安心・安全に利用してもらうためには、認証レベルが高いものをおすすめします。

セキュリティ対策のための費用

アプリを開発してリリースする上で、セキュリティ対策は重要な課題として取り組む必要があります。もしアプリの脆弱性を利用して第三者が情報を漏洩させてしまうと、ユーザーの機密情報を流出させた責任は企業が負わなければなりません。

アプリリリース後のセキュリティチェックやバグ修正にかかる運用・保守コストに関しては、安全にアプリ提供するために、維持費としてあらかじめ算出しておくことが求められます。また、メンテナンスに含むことができない修正が必要な場合は、追加で修正費用が発生するケースもあることを考慮しておきましょう。

アプリストアへの登録費用

開発したアプリをiOS/Androidの各プラットフォームでリリースする場合、それぞれでデベロッパー登録が必要です。

iOSはApple Developer Programが99ドル/年、社内向けアプリなどを開発する際の法人向けはApple Developer Enterprise Programが299ドル/が、AndroidはGoogle Play登録日が25ドル(初回登録日)がストア登録費用として必要です。

また、アプリは購入やアプリ内課金ごとにストアから徴収される手数料がある点にも注意が必要です。

保守・運用にかかる費用

リリース後、メンテナンスや機能追加にかかる費用が保守・運用費用です。

アプリの種類や機能によって異なりますが、保守・運用にかかる費用はアプリ開発費用のおよそ約15%に相当し、年間を通じて費用が発生します。

スマートフォンアプリではiOS/AndroidのOSバージョンアップに対応しなければならないケースが多くあります。この場合は保守・運用費用の範囲内でアプリのバージョンアップに対応することが一般的で、アプリ開発を外注した場合は外注先がそのまま保守・運用を担ってくれるでしょう。なお、保守・運用体制のサポート範囲は開発会社それぞれにポリシーが異なるため、十分に保守・運用体制を確認して契約することが重要です。

また、基本的に保守費用には機能追加にかかる費用が含まれません。機能を追加開発する場合は保守・運用費用とは別に、開発費用がかかる点にも注意しておきましょう。

開発費用が高くなってしまうのは何が原因?

前章でご説明した通り、開発費用の大部分を占めるのがエンジニアの人件費です。アプリに搭載する機能が多ければ多いほど、開発期間が長ければ長いほどエンジニアの人件費は増加してしまいます。さらに、アプリ開発に必要な機材や設備も固定費として計上され、先述したドメイン・サーバー管理費やSSL証明書なども固定費に含まれます。

これらアプリ開発にかかる費用を抑えるためには、アプリに搭載する機能を削ったり、開発期間を短くしたりする方法があります。どのような機能をアプリに搭載するかを精査して、必要な機能だけを絞り込んで開発すれば、開発費用を圧縮することが可能です。

詳しくは後述しますが、アプリ開発費用を抑えたい場合、搭載する機能を限定して工期を短縮する方法が有効です。

アプリの開発費用を抑えるためには

アプリ開発費用を削減する方法には、以下のようなものがあります。

一部の工程を自社内で対応する

アプリ開発工程を全て外注するのではなく、一部工程を内製化することで開発費用を抑える方法があります。例えば社内にデザイン部門があるのであれば、アプリのロゴデザインを内製化することは可能でしょう。また、社内のデザイナーは自社のサービスを良く理解しているため、ブランディングを成功させやすい点もメリットと言えます。

一方で、アプリのインターフェースデザインに関しては専門性の高いUI/UXデザイナーに依頼した方が良い結果につながる場合がほとんどです。アプリの使い心地や操作性は、ユーザーがアプリを通して得られる経験に影響を及ぼし、アプリの継続利用率などに反映されます。UI/UXデザインはアプリの成功を左右すると言われ、アプリの重要なセールスポイントです。

アプリ開発・運用経験があるUI/UXデザイナーでなければ設計できないデザインや構成などが少なからず存在するため、UI/UXデザインは外注先に依頼することをおすすめします。

パッケージやテンプレートを利用する

アプリ開発手法にはシステムを一から開発する「スクラッチ開発」と、既存のシステムをテンプレートにして開発する「パッケージ開発」などがあります。スクラッチ開発は独自性や設計の自由さが特徴ですが、システムを全て一から開発するため、開発費用は高額になりがちです。

パッケージ開発はパッケージと呼ばれるシステムのテンプレートにあたるものを活用して、一部機能追加するなどカスタマイズしてアプリを開発します。他のアプリにはない独自性のある機能を搭載する場合を除き、パッケージ開発でアプリを開発した方が開発費用を抑えられるメリットがあります。

ただし、パッケージ開発にはカスタマイズに限界がある場合があります。機能を追加したくてもパッケージによっては追加できないケースもあるため注意が必要です。また、機能追加を繰り返したことでシステムが複雑になり、アプリの保守・運用にかかる費用が増加することもあります。

機能を絞り開発工程を減らす

先にご紹介したように、アプリに搭載する機能数を絞り込むことで、開発期間を短縮し、開発費用を抑えることが可能です。

アプリに搭載する機能が過剰になってしまう原因として、「アプリ開発の目的自体が曖昧だった」というケースがあります。アプリをつくる明確な目的や完成形のイメージが無ければ、機能の取捨選択ができずに、本来必要無い機能を搭載するために費用をかけてしまうでしょう。

開発期間を長期化させないためには、企画段階で必要な機能を絞り込み、開発難易度を適切なものにする取り組みが必要です。

エンジニアの単価を抑える

アプリ開発費用の大部分を占めるエンジニアの人件費を抑えることは、アプリ開発費用に大きなメリットがあります。

エンジニアの人月単価は先にご説明した通り技術力によって変動し、およそ60~160万円/月ほど開きがあります。当然ですが、エンジニアの人月単価が安い開発会社にアプリ開発を外注すれば開発費用を抑えることが可能です。

その他、人件費を抑える開発方法として「オフショア開発」があります。オフショア開発は海外の人月単価が安いエンジニアにアプリ開発を委託する方法です。例えばベトナムのエンジニアに委託する場合、およそ33万円前後/月に人件費を抑えられると言われています。ただし、オフショア開発には納期や品質などに課題がある場合も多く、却って開発費用がかかるリスクも考慮しなければなりません。

複数社へ見積もりを行い各費用を比べる

アプリ開発費用の見積もりを取る際には、複数社に依頼して、提案を比較検討することが重要です。各社の見積もりを比較するときには、提案された見積もり額だけでなく、過去の実績なども併せて検討しましょう。過去に同じ種類のアプリを開発した実績がある企業であれば、過去のアプリの開発・運用で得たノウハウが蓄積されているため、想定通りのアプリを実現しやすいはずです。

また、アプリ開発の目的が明確化できていない場合、コンサルティングや適切な提案があるかといった点も大事なポイントになるでしょう。また、リリース後の保守・運用サポートの有無や費用についても見積もり段階で把握しておくことが重要です。

まとめ

ここまで、アプリ開発にかかる費用の多くが人件費であること、そしてアプリリリース後にも保守・運用に費用が必要とされることなど、アプリ開発に必要な費用の内訳を解説しました。

ご紹介した通り、アプリ開発は各ストアからリリースした後の運用段階からが本番で、ユーザーが目的を果たせる機能を提供できるアプリを維持することが重要です。そのためには、運用サポートを任せる開発会社と協力関係を維持しなければなりません。

アプリ開発の際には開発にかかる費用も重要ですが、長く関係を維持できる外注先を選ぶことがアプリのコストメリットを大きくすることにつながるでしょう。