アプリをオフショア開発するメリット・デメリットや費用を解説

2000年代後半から盛んになった「オフショア開発」。今や多くの企業がインドやベトナムといった国を中心に、オフショアで開発を行っています。しかし、まだオフショア開発の経験がない場合、実施にあたってどのようなリスクがあるのか、具体的にどのようなメリットがあるのか、いまいち把握できていないという方も多いでしょう。そこでこの記事では、オフショア開発にフォーカスして、概要やメリット・デメリットなどを解説します。
アプリの「オフショア開発」とは?
そもそもオフショアとは、「自国から離れた地域」を表し、主に「海外」という意味で使われます。一般的にアプリのオフショア開発というと、「海外にアプリ開発を委託すること」を指します。委託内容は主に、WebシステムやソフトウェアなどのIT開発業務です。海外、特にインドやベトナムなどオフショア開発国と呼ばれる国では、日本と比較して賃金水準が低いものの、ITに関する技術が高いため委託先によく選ばれています。
ちなみに、オフショア開発では国を越えてやりとりをするため、言語・文化・商習慣といった面で円滑な意思疎通をするために、「ブリッジエンジニア(ブリッジSE)」がプロジェクトの管理・調整などを行うことも特徴です。
近年はインターネット上でもオフショア開発に関するナレッジを収集できるようになったほか、創業10年を超えるオフショア開発企業や特定の領域に特化した新興企業まで、様々なタイプの企業が選択肢として存在するようになりました。かつては特殊な手法として、チャレンジの意味合いが強かったオフショア開発が徐々に一般化されてきているのです。
アプリをオフショア開発するメリットとは
オフショア開発の一番のメリットは、海外の人材を活用することでコストカットができることです。日本のIT人材は不足しており人件費が高くつきがちなため人月90万円〜が相場ですが、オフショア開発会社に依頼する場合は人月30万円〜から検討可能です。つまり、日本で1人のエンジニアを雇用するコストで、ベトナムではエンジニアを3人雇える計算になります。
また、オフショア開発国には技術力が給与に直結する企業文化や、高い学習意欲を持つ国民性といった特徴があるため向上意欲があり、高度なIT人材を多数抱えています。つまり、低コストで高度な技術をもった人材を確保できるのです。
「優秀な5人のプログラマは、二流のプログラマ1,000人を凌駕する」という言葉があるほど、エンジニアの技術力はプロダクトの質を左右する問題なので、かなりのコストカットができると言えます。
オフショア開発のデメリットやリスク
低コストが魅力のオフショア開発ですが、あまりにも安すぎる場合は注意が必要です。
コストを抑えようとするあまり比較・検討をせずに依頼した結果、「設計と全く異なるアプリが納品された」「アプリの質が著しく悪い」といったケースもあるようです。こうしたトラブルは、契約前から密なコミュニケーションをとり、丁寧に進捗確認をすることで回避可能です。
また、相場から大きく外れた低価格の提案に注意するなど、金額に関する確認はもちろん、コピー&ペーストばかりの設計になっていないか、素早く円滑にレスポンスが取れるか、実績や評判に懸念はないかなど、事前の確認を深く行いましょう。
特にオフショア開発では言語の違いがあるため、コミュニケーションが取りづらいことは明確です。ディレクションの際も、委託先が理解できる言語に翻訳してエンジニアに伝える必要があります。
ちなみに、委託先を選ぶ際には二国間友好関係や開発国内の内政状況の安定性も合わせて確認しておくことをおすすめします。紛争や戦争などによって開発が中止になってしまうケースも考えられるため、リスクが少ない国と地域から選びましょう。
アプリをオフショア開発した場合の費用・期間
ここからは、アプリをオフショア開発した場合にかかる費用や期間について解説します。
開発費は「エンジニアの単価×人月+固定費」とする、人月単価制が一般的です。オフショア開発でアプリを開発する際も、計算方法は同様です。一般的に、オフショア開発でかかるエンジニア単価は25万円~30万円が相場と言われていますが、中国では35万円~40万円、ミャンマーでは18万円~20万円など、依頼先の開発技術やノウハウなどによって多少変動します。
また、一般的には開発期間を3ヶ月から1年ほどに設定します。以下は、開発期間全体を3ヶ月と仮定した際の目安です。
- コンセプト作成 :2週間~1ヶ月
- 制作会社によるヒアリング:2週間~1ヶ月
- 要件定義 :2週間~1ヶ月
- 見積もり・契約 :数日~1週間
- システム設計 :2週間~1ヶ月
- プログラミング :1ヶ月~3ヶ月
- 公開 :スタートから3ヶ月後〜
依頼する国によってはスケジュールや納期に対しての管理が甘く、発注したものが完成するまでに時間がかかるケースがあります。そういったトラブルを回避するためにも、定期的にコミュニケーションを取り、納期やスケジュールを伝えるように心掛けましょう。
ちなみに、オフショア開発ではよくおすすめの国として挙げられるのは「ベトナム」です。ベトナムはIT人材のレベルが高いため、コストに関するメリットが大きく、日本の開発レベルに対応できると言われています。
また、大型の案件の場合は中国やインドなどノウハウが蓄積されている国に委託しましょう。一般的に単価は高くなる傾向にありますが、案件内容や案件の規模によっても、そのコストは大きく変わります。インドや中国に依頼した方が、トータルの開発費用を安く抑えられるケースもあるため、場合に応じて検討することが大切です。
アプリをオフショア開発する場合の外注先の選び方
外注先を選ぶ際には、アプリの開発実績や開発形態、対応スキルなどについて確認しておくことをおすすめします。
まずはアプリの開発実績ですが、オフショア開発を行う会社も分野によって得意不得意があるため、作りたいアプリと得意分野が合致している会社を選ぶと良いでしょう。
次に開発形態です。一般的に、オフショア開発は「請負型」「ラボ型」の2種類に分かれます。そのため、まずはそれぞれの特徴を把握したうえで、自社に適した開発形態を選ぶ必要があります。
・請負型
一定の成果物が完成したら開発業務が終了する形式で、プロジェクトごとに契約する点が特徴です。
・ラボ型
一定期間クライアント専属のチームを用意して開発を行います。
基本的に、オフショア開発ではラボ型で開発を行う会社が多い傾向にあります。
そして最後に、スキル面の確認です。スキルを判断する際は、コミュニケーション能力や使用言語の習熟度、過去の開発コードなどをチェックしてみましょう。
まとめ
この記事では、オフショア開発の概要やメリット・デメリット、費用の相場などを解説しました。
オフショア開発とは、インドやベトナムなどの海外にアプリ開発を委託する開発手法です。海外人材を登用した開発は、言葉・文化の違いによるコミュニケーションロスなどはあるものの、低コストで高度な技術をもったエンジニアが多く、活用できれば大きなコストカットが実現できます。
アプリの開発実績や開発形態の確認、現地エンジニアのスキルチェックなどを行い、トラブルを回避しながらお得に開発を進めてみましょう。